湖上の出会い
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「湖上の出会い」
琵琶湖の魚や水に関る仕事をしているため、船で琵琶湖に出る機会が多い。湖岸から望遠鏡で見る湖上の鳥たちは、蜃気楼の中に揺らめいて、はるか沖合にまで分布しているかに見えるが、大半の水鳥は沿岸に分布し、船で沖に出てみると出会う鳥の種類も数も意外に少ない。魚群を追って集団で移動するカワウやハジロカイツブリなどを除けば、特に北湖の中央では、見渡す限り平坦な水面が続く景色の中で、たまにポツリとした出会いがある程度だ。 冬の穏やかな日の朝、北湖の沖合には沖曳(ちゅうびき)漁を営む船が点々と浮かび、二本の長いロープの先にある底曳き網を機械で巻き上げている光景が見られる。操業中の漁船の周りにはカモメが群れを成して湖面に浮かび、おこぼれの魚にありつこうと、漁師の作業を見上げている。最初、船に集まるのはカモメ類だけかと思っていたが、今から26、7年前の夏の日の夕刻、南湖の沖にボートを停めて水質を調べていた時のこと、十羽くらいのゴイサギの群れが飛来し、船の周りに次々に舞い降りたことがあった。私はその時までサギ類が水面に浮かぶ姿を見たことが無かったので、溺れてしまうのではないかと焦ったが、彼らは平然と水に浮かび船上の私の作業を見上げている。やがて、「おこぼれは無い」と悟ったのか、飛び去って行った。 また、1994年10月の台風通過後、川から大量の浮遊ゴミが流れ込んだ北湖に船を出して作業中、1羽のオオミズナギドリが近寄って来て着水し、2mの至近距離から船上の作業を見上げていたこともあった。見るからに疲れきった姿に手元にあったパンをちぎって投げてみたが、飛びついたものの結局食べなかった。1時間の作業中ずっと船のそばに居たが、次の現場に向かうため、彼を残したままそこを離れた。途中、力尽きてゴミの中に浮かぶ仲間の姿を目にした。 季節的な移動をする小鳥にとって、琵琶湖は狭いながらも海と同様の障害となる。日中、湖上を渡る小鳥の姿を見る機会は少ないが、ヒヨドリは群れで渡るのを目にする。それも、彦根と高島の間の幅15kmもある所を渡っている。4月に西から東に、10月には逆方向に渡っているようだ。途中には沖の白石と多景島があり、中継点になり得るが、そこはハヤブサの拠点ともなり、大きな試練が待ち受ける。ハヤブサの執拗な攻撃に犠牲者が出るところも何度か目撃した。 南北に長い琵琶湖は渡りをする鳥たちの通路にもなる。ある 6月の朝、彦根の職場の港を出航し船首を竹生島に向けた。目的地は大浦湾、時速30キロで竹生島の西端をかすめる直線コースを北に50分の行程。航行中、遠く右舷方向に姉川河口を望むあたりで、100mほど離れたところを船と並行して、何か小さな鳥が4羽かたまって飛んでいるのに気がついた。操船中のため、横目で窺うしかないが、水面すれすれをツバメのような羽ばたきで飛んでゆく。竹生島を目指しているのか?それから5分あまり、彼らは船と同じ速度で北へ向かって飛び続けた。突然、1羽が湖面に降りたかと思うと、残る3羽も着水。ツバメではない。行動からアカエリヒレアシシギ?と胸に刻んだ。 湖上の出会いは、普段気づくことの無い鳥達の一面を見せてくれる。仕事中なので、じっくり観察という訳にはいかないが、いつの日か仕事を離れて、琵琶湖へ鳥を見るための船旅に出かけてみたいものだと思う。
びわみじんこ |
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